「Black Dream」 著者: China Cat 様 投稿日: [2002.09.11]
 
スポーツクラブで水泳指導担当のインストラクター、智美(サトミ)は、同僚で同じような年代のインストラクター仲間で仕事帰りに居酒屋で飲んでいた。 
メンバーは、智美の他に三名。同じ水泳指導の平木隆男(ヒラキ・タカオ)、マシントレーニング担当の田岡亮(タオカ・トオル)の男二人に、エアロビクス担当の女性インストラクター、山村加奈子(ヤマムラ・カナコ)であった。 
いずれも三十歳そこそこの年齢で、このうち平木だけが結婚していて二人の子持ちだった。 
この四人の中でわずかながら一番年下でインストラクターとしてのキャリアも浅い智美は、「サトミちゃん」の愛称で呼ばれていた。 
たわいない話で田岡が最初の一杯の後の雰囲気を盛り上げると、今日あった出来事に話が及んだ。 
「そう言えば、さっき平木から聞いたんだけどさ、サトミちゃん、高木のおじいさんに抱き付かれたんだって?」 
田岡が智美に問い掛けた。”高木のおじいさん”とは、シルバー世代対象のスイミングスクールに参加している今年六十五歳の男性である。 
「え? そんなわけでもないけど」 
智美が平木に視線を送ると平木が代弁した。 
「まああれは俺も近くで見てたんだけど、プールから上がって急に足がつってよろめき、すぐそこにサトミちゃんがいたってわけだ。そこでつい抱き付いてしまったと」 
「いきなり後ろからだったので、びっくりしてキャッ!て叫んじゃいました」 
「周りは爆笑?」 
加奈子が口を開いた。すると智美は照れ臭そうに答えた。 
「そうですね。オバサマ達がセクハラだって高木さんをからかってました」 
「でもなぁ、動きが少しわざとらしい感じだったな」 
平木が冷静に言うと、田岡が笑いながら言った。 
「サトミちゃんかわいいから、年甲斐もなくムラムラしちゃったんじゃないの」 
「でもさ、親しいオバサマ会員から聞いた話だけど、あの高木さんて若い頃は性欲旺盛で、奥さん以外の何人かの女に入れあげて奥さんを泣かせてたらしいわよ。今スポーツクラブで水泳やってるのって健康のためというより若い女の水着姿見るためじゃないかともそのオバサマは言ってた」 
加奈子が言った。すると田岡が即座に反応した。 
「じゃあサトミちゃんの高木氏のターゲットの一人ってわけか?」 
「そ、そんな。それじゃあ次回から高木さんとまともに接することができなくなるじゃないですかぁ」 
智美は困った表情を浮べた。 
それから、やはり水泳でスポーツクラブに通うある二人の若い女の話題になった。 
「話は変わるけど、例の二人組、今日も仲良く泳ぎに来てたね」 
話題のネタに持ち出したのは加奈子だった。 
「ああ、噂の二人。赤っぽい水着と真っ黒の水着のコンビだね」 
平木はよくアドバイスする立場なので特徴を言った。 
「別の会員が言ってたの。ジャクジーへ行ったら、たまたま彼女ら二人きりで、ちょうどキスしてた所だったって」 
「へー、本当? そりゃあ完璧にレズだ」 
興味深げに田岡が言った。 
「まあ別に他の人に迷惑かけるわけでもないからいいじゃない? でもキスしてたり抱き合ったりしてたらちょっと驚くけどね」 
加奈子は同性愛を容認するかのように言った。 
 
その後、ほどほどに酔いが回った所で解散となった。 
「ねえ、明日は休館日だし、女同士でもう一軒軽く行かない?」 
男性陣と別れた後、智美を加奈子が誘った。 
「もうあんまり飲めませんけど、あと少しだけなら・・・」 
そして加奈子の馴染みの店と思われる落ちついた感じのスナックに入った。小さなその店は初老のマスターが一人で切り盛りしていた。 
「例のレスビアンコンビだけどさ、二人を見てるとあたしもつい昔を思い出しちゃう」 
加奈子がさり気なく口にした。 
「え?」 
「サトミちゃん、そんな経験ない?」 
「いえ」 
「あたし女子高でさ、体操部にいたんだけど、新体操やってた先輩に凄くあこがれた。美人で新体操もうまくて全国大会には進めなかったけど、県大会で五位入賞。もうその先輩に話し掛けようとすると胸がドキドキしたし、抱き締めたくなちゃったものよ」 
「何となくわかります。でもそんなあこがれが必ずしも同性愛に結び付くとは・・・」 
「まあそうだけどね」 
「ところでサトミちゃん、彼氏はいるの?」 
加奈子は急に矛先を変えた。 
「いいえ今は」 
「そう。どんなタイプが好き?」 
「とにかく優しい人ですね」 
「田岡さんなんかどう?」 
「いい人だと思いますが、ボディビルダーみたいな人はちょっと・・・」 
「そうか・・・。でもあの人、サトミちゃんに気があるよ。目線でわかるもん」 
「え? そ、そうですかね・・・」 
「見かけによらずシャイだからね。でも思いかなわずプッツンしたらあの腕力だからね・・・」 
「脅かさないで下さい。ただせさえあたし・・・」 
「どうかしたの?」 
「実は・・・、ゆうべ変な夢を見たんです」 
智美は昨夜見た夢を話した。それは次のようなものだった。 
プールサイドの片付けを終えて仕事を切り上げ、シャワールームに入ると、プロレスラーのようなマスクをした男が待ち伏せしていて、いきなり羽交い絞めにされてその場に座り込まされた。 
男の手にはナイフが握られており、脅えていると口にガムテープを貼られ、言う通りにしろと命じられた。 
脅えながらうなずくと水着を脱げと命令され、それに従った。すると男は下半身剥き出しになり、智美に覆いかぶさって来た。 
あお向けに寝かされ、涙を浮べながら覚悟を決めた瞬間、夢から覚めた。 
「レイプされる夢ね。怖いわね・・・。でも、結構それでアソコ濡れてたりして」 
加奈子が冗談とも本気とも取れるような表情で言った。 
「変なこと言わないで下さい。あたしはそんなレイプ願望みたいなのってないです」 
真顔の智美の反論に、加奈子は笑って応えた。 
「冗談、冗談! そんなむきになって、サトミちゃんてかわいいね」 
だが智美は憂うつな気分は拭えなかった。実際には夢から覚めた時、智美は寝汗に寄る全身と共に秘部も濡れていたのである。 
加奈子にそれを言い当てられドキッとした。 
そんな智美の内心を察する様子もない加奈子は、智美の右隣に座っていたが、カウンターの上に置かれていた智美の右手に、自身の左手を重ね合わせてきた。 
「え?」 
加奈子の左手はそのまま智美の右手を握り締めた。そして加奈子は耳元でささやいた。 
「さっきのあこがれの先輩なんだけどさ、サトミちゃんに似てるんだ。だからあたしサトミちゃんのこと・・・」 
智美は思わず反射的に右手を引っ込めると膝元に置いた。 
すると加奈子は、「ははは・・・」と大きな笑いを漏らした。 
「冗談だって! からかってみたくなっただけ」 
「やめて下さいよ。焦ちゃったじゃないですかぁ!」 
 
その夜。 
智美はまたも夢を見た。 
夢の中でスポーツクラブのプールにたった一人で泳いでいた。コースを数往復、メドレーで泳ぎ切ると適度に大きな息をしながらプールサイドに上がろうと手をついた。 
すると目前にそこに誰かの足元があった。 
それも二人の人間の足元だった。 
見上げるとそれは例のレスビアンコンビの二人だった。二人とも揃いの水着だった。 
思わずハッとする智美に二人は笑みを浮べた。そして智美がプールサイドに上がるのをサポートするように一方の女が手を差しのべた。 
「あ、ありがとう」 
智美はプールサイドに上がって礼を言ったが、その手はしっかりとつかまれたままだった。 
どうしたかと思っていると、女は手を引っ張って智美の体を招き寄せると抱き上げた。 
それに歩調を合わせてもう一方の女は智美のヒップを持ち上げた。そして、そのまま二人は連携して智美をプールサイドに座り込ませてしまった。 
智美の手をつかんだ方の女は智美の背後に座って密着すると、智美の両腕を後ろ手に回させて強い力でつかみ、もう一方の女は智美の足先の座り智美の両足首を押さえ付けた。 
『何をするの?』 
そんな思いを抱くとそこへ音もなく第三の女が現れた。それは山村加奈子だった。 
いつものエアロビ用のピンクで光沢のあるレオタード姿の彼女は、智美の脇にしゃがみ込むと素早い動作で智美の唇を奪った。 
さらに右手でバストを愛撫し始め、智美は思わず「あっ」と声を漏らした。 
突起してしまった乳首を加奈子の指先は確実に捉え、軽くつまんで引っ張った。 
抵抗しようにも二人の女にしっかりと押さえ付けられてはなすすべもない。 
されるがまま身を任せるしかないと覚悟を決め、力を抜くと、足元を押さえていた女が智美の股間に顔をうずめるように覆いかぶさると、水着の上から秘部のあたりを舌先で愛撫を始めた。 
さらに背中に密着している女は、智美の両腕をつかんだままの体勢で耳を舐めてきた。そして耳元でこうささやいた。 
「あたし達の仲間になろうよ・・・」 
加奈子は智美の乳首を指先に代えて舌先でなぞるように愛撫し始めた。合間にこんな言葉を投げ掛けて。 
「そうよ。楽しいわよ、女同士って。ね、サ・ト・ミ・・・」 
耳、乳首、秘部の三箇所同時責めに、智美は息を荒くした。 
智美はあえぎながらふと反対側のプールサイドを見ると、思わず背筋が寒くなる思いがした。 
そこには何と、あの高木が立っていたのである。Tシャツに短パンの、マシントレーニングしてきたかのような姿で、智美が三人の女に攻めを受けているのを見てにやにやしていた。 
「もうやめて!」 
 
悪夢から目覚めた智美は、びっしょりと汗をかき、眠った気がしなかった。わずかに頭痛もする。 
のどがとても渇いて冷たい水が欲しくなり、冷蔵庫に入っているウーロン茶を思い出すと、それを飲もうと起き上がった。 
その時である。現実の自身の異変に智美は気付いた。 
「あたし何て格好してるの?」 
Tシャツとゆったりした短パン、それが夏の夜の就寝スタイルで、昨夜も確かにそのスタイルだった。 
しかし何故か少し前まで仕事で着用していた競泳水着を身に付けている。 
濃紺でサイドラインの入った水着で、現在仕事で常用しているのは同じような濃紺でも花柄プリントの水着であった。 
「どうして? 変な夢で寝ぼけて、たんすからこんなの引っ張り出して着たのかしら?」 
不可解な思いの智美だった。 
 
 
智美の住いは、その近辺では平均位の家賃のアパートに一人暮しであった。 
勤務先のスポーツクラブの休館日、いつもの休みの日のように掃除、洗濯に取り掛かった。 
猛暑が訪れた今夏、エアコンを止めて部屋中の窓を全開にして掃除に励むと多量の汗が流れた。 
掃除や洗濯が一段落着くと、いやな夢と目覚めた時に何故か競泳水着を着ていた謎で気分は優れなかったが、遅めの昼食に好きな宅配ピザを注文し、主婦向けのワイド番組を見ながら缶ビールを開けて一人食事を楽しんだ。 
「それにしても、あの夢のことを引きずっていたら、明日から加奈子さんや高木さん達と顔を合わせづらくなっちゃう・・・。それにレズと思われてるあの二人のとも・・・」 
ふと浮かぶそんな思いを缶ビールをグイッと飲むことで帳消しにしようとした。 
 
そして夕方近くになり、買い物に出掛けようとした矢先のこと。 
ピンポーンと呼び出しベルがなった。インターホンのスイッチを押して誰か尋ねると、 
「毎度ー、宅配便です」 
といつもの威勢のいい宅配便の配送係の声が聞えた。 
智美の実家は栃木県で農家をしていた。農協の幹部である父親は娘の健康を気遣って、よく無農薬あるいは低農薬野菜を届けてくれていた。この日届いたものもそれであったが、それを受け取ると、顔なじみの配送係の青年は一瞬間を置いてこう言った。 
「あの、これもお宅宛の荷物ですよ」 
受け取ってドアを閉めると後から受け取った荷物を確認した。差出人名は通販業者のようだった。品名には「水着」とあった。 
「あたしこんなの買った覚えはない」 
そう思いながら中身を開けると、中からARENAブランドの黒地に黄色のストライプ柄の競泳水着だった。同梱の納品書には、智美自身が購入申し込みした旨と御礼の言葉、商品明細が書かれていた。代金領収書も同封され、代金支払済であることを物語っていた。 
「だ、誰かのしわざなの・・・?」 
困惑する智美だった。二夜連続しての不気味な夢、そして自分の名を語る人物からの贈り物に背筋がゾクッとする思いだった。 
「もしかしてストーカー? だいたい競泳タイプの水着を送るなんて、あたしがスポーツクラブで働いているのを知っているからだ。まさかあたしのことよく観察したり、尾行したりしてるんじゃ・・・」 
二日前の夢に現れたレイプ犯を思わず連想し、ベランダ側のカーテンを締め切ってしまった。 
 
その日の夜、三日続けて性的な暴力の夢は勘弁してほしいと念じて睡眠に付いた。その甲斐あってか、変な夢は見なかった。 
しかし。 
「あ、何なのこれは・・・!」 
朝目覚めて思わず声に出した。気持ち悪くて部屋の片隅に放置しておいた競泳水着の贈り物だったが、何故かそれを身に付けていたのだ。 
寝る前に身に付けたTシャツと短パンはベッドの隅に丸めてあった。 
「一体どうして・・・?」 
しかも水着の股間部が気になって指先を当てるとわずかに湿り気を帯びているような感じがした。 
「まさかあたし無意識にこれ着て、自分でアソコを・・・。うそ、あたしって何なの・・・?」 
 
それから二週間後が経過し、性的な変な夢を見たりすることも、寝ている間に水着を身に付けたりするということもなかった。智美は取りあえず平静さを取り戻しかけていた。 
だが、またも智美自身を購入者名として競泳水着が送られてきた。今度はASICSブランドの赤い水着だった。やはり代金支払済みを示す領収書と納品書が同梱されていた。 
「もうやだ・・・。一体誰なのよ!」 
誰なのかわからない怖さにいら立ち、思わず声を上げてしまう智美だった。 
「絶対ストーカーのしわざだわ。誰かがあたしを狙っているんだ・・・。でもどうしよう、これだけで警察は相談に乗ってくれるかな」 
智美は考えたが、具体的な被害はまだ何もなく、むしろ代金支払済みの贈り物による利益を得ているわけだから警察は「何かあったら連絡を」程度の対応だろうと予測した。 
そこで通販会社に電話して対応に出た社員に事情を話した。 
その通販会社では、商品の申込み方法は専用の郵便振替用紙に記入するか、郵便局備え付けの郵便振替用紙の通信欄に必要事項を記入し、それを使って郵便局で送料・税込みの代金を振り込めば売買契約成立となり商品が発送されるという仕組みだった。 
これでは相手の事はわからないだろうと智美は思った。社員は警察に相談してみてはと提案してきたが、それは既に考えていたことなので、「そうします」と適当に返答して電話を切った。 
『いっそ返品しちゃおうか・・・』 
そんな思いもよぎったが、そうすれば依頼主に代金が返金され、それによって相手を怒らせるか不快な思いをさせることになり、具体的な行動に出るかもしれない。それを考えると、取りあえず送られた水着はそのまま持っているのがいいと判断した。 
 
そしてその夜も悪夢を見た。 
前と同じようにスポーツクラブのプールをたった一人で泳いだ。その後コース途中のプールサイドに寄ると、プール内の壁に寄り掛かるように立ったまま水面を見つめていた。 
やがて背後から人の気配を感じると、振り返る間もなくいきなり背後から羽交い絞めにされた。声を上げようと口を開きかけた瞬間、ボールギャグを噛まされた。 
声を上げることもできず、抵抗する気も萎えると、胸元に小型のサバイバルナイフを押し当ててきた。 
「静かにしろ。俺の言う通りに従うんだ。いいな?」 
明らかに男の声だった。ボールギャグのために言葉が発せない智美は震えながら首を縦に振った。すると男の声は続けて命令した。 
「手を後ろに組め。そして足を少し開き気味にするんだ」 
言われた通りに従う智美に、男はナイフの刃を水着の上から右の乳首に当ててきた。 
「逆らいでもしたら、水着ごとその大事な所を切り裂くぞ。わかったな」 
そう言いながら男は、智美の右の乳首をナイフの柄の部分を押し当て刺激し始めた。 
恐怖心に支配されながらも乳首は徐々に突起した。智美は怖さと共に切ない気持ちになった。 
やがて男は、ナイフでの右乳首責めに加えて、その左手で智美の左の乳房をわし掴みにすると揉み始め、そのまま乳首の先をつまんでの愛撫へと移行した。 
「いいか、手は後ろ手に組んだままだ。やめたらこのナイフで痛い目を味わうぞ」 
両乳房への刺激で智美は体をピクピクと震わせた。ボールギャグで開いたままの口からは唾液が漏れ出した。 
止めようにも止められない。糸を引くように流れ落ちた唾液は水着の胸元に染み込んだ。 
『恥かしい』 
これがボールギャグの特性なんだと実感した。 
両乳首への執拗な責めは続けられ、やがて男は着衣のままプールに入り込んだ。 
智美は命じられた通り両手を組んだままでいると、男は智美の股間へと左手を伸ばした。 
そして、水着の内側に指を入れ、秘部の突起部の周りを刺激し始めた。芯をわざとじらすように撫で回しては、周期的に突起部の芯をかすめた。 
右の胸元に突き付けられたナイフへの恐怖心の一方で、感じる部分への断続的な責めから、そうされることに対する妙な快感が徐々に智美を支配してきた。 
背後の男は突然左手を休めると、智美の左手首を掴んで、智美自身の股間へと誘導した。 
「さあ、自分でやれ」 
男は耳元で命令すると、その左手は再び智美の左乳首への責めを展開。智美は自らの手で股間への刺激を始めた。 
プールに浸かったままやるオナニーは水の冷たさで余計に秘部を刺激する感じがした。 
しばらくすると、口から漏れ出す唾液の量が増し、智美はガクッと膝が崩れて立っていられなくなってしまった。 
自らの手でイッてしまいそうになったからだ。 
 
そこで夢は覚めた。 
「な、何なの! あ、あたしって本当に・・・」 
夢から覚めてさらに驚くべき事態となっていた。 
先日と同様に、送られてきた赤い水着を身に付けていた。 
しかも右手の指先は夢の中の出来事を物語るように股間に触れていて、自身の分泌液が水着の股間に染み込んでいた。 
さらに枕が唾液でかなり濡れていることも発見した。 
「あたし、本当にオナニーしていたんだ・・・」 
思わず自己嫌悪と、何かに取り付かれているのではと奇怪な感情に陥ったのである。 
謎の人物からの水着の贈り物と、三度に渡る性的に追い詰められる夢、そして気付かぬうちに水着を身に付けて眠っていたという事実に、動揺の色は隠せなかった。 
「誰か助けて・・・」 
 
 
智美の同僚でマシントレーニング担当の田岡亮は、ある日、智美がスイミングの先輩インストラクターである平木隆男に叱責される場面を目撃した。 
閉館時間を過ぎてスイミング担当スタッフが片付けを終わった直後で、他のスタッフは気をきかせてさっと引き揚げた。 
平木が言いたいことを伝え終わって背を向けて引き揚げると、智美はプールの照明を落とした。ここのプールは大きなガラス窓が張られていて、照明がなくても街灯の薄明りが入り込んでくる。 
智美は涙ぐみながら水着の上に着ていたTシャツを脱ぎ捨て、キャップを被って素早くプールに飛び込んだ。 
そして早い泳ぎでコースを往復した。華麗でダイナミックなクロールだった。 
田岡はプールサイドの片隅で見とれていた。智美はタイムを競うような泳ぎで一往復すると、そのままもう一往復するかのようにターンしたが、コース途中で足を着いた。よく見ると肩を震わせて泣いているようだった。 
「何を叱られたんだ?」 
田岡は智美のことを心配すると同時に薄明りの中で智美の身体を凝視した。 
やや細身ながら均整の取れたスタイル、元水泳選手らしい筋力も備わっている。 
少ししてプールから上がった智美は、濡れた競泳水着の光沢感でまぶしく見えた。 
キャップを外した後の濡れた髪とヒップラインの食い込みを直す仕草がとてもセクシーだった。 
「サトミちゃん、平木に何言われたんだ!?」 
プールサイドの智美煮に田岡が駆け寄った。 
「あ、田岡さん・・・。見てたんですか?」 
「ま、まあね」 
「あたしがいけないんです。このところ仕事に身が入らなくて・・・。それで」 
手で顔を覆いながら泣いてしまった智美。田岡は智美の肩を抱き締めた。 
「どうして?」 
「あたし、怖いんです」 
智美は田岡のビルドアップされた胸に顔をうずめ、しばらくそのままにしていた。 
やがて智美は背伸びをして、田岡に唇を重ねてきた。 
戸惑いながら田岡が応じると、次に舌先を田岡の口に入れようとした。 
もう応えるしかないと思った田岡は、舌先を絡め合った。 
互いの舌先の感触を確かめ合うことを繰り返した後、智美が耳元でささやいた。 
「ショルダーを、は・ず・し・て」 
甘えた話し方に思わずゾクッとした田岡は水着のショルダーを外して智美の胸元を露わにした。 
形の良いバスト、そしてピンク色の乳頭がみずみずしく見える。 
すでに乳首は突起していて、その向きは水平方向ではなく、明らかに上向きだった。 
上向きに突起している乳首は、『早く愛撫して!』と無言で訴えているようで男の本性を挑発した。 
田岡は我を忘れて膝を地面に着けた格好になり、顔を乳首に近付けるとそれを口に含んだ。そして音を立てて夢中で吸い付いた。 
「あ、感じちゃう・・・。そ、その吸い方。すごく感じる」 
ある程度それを続けると、乳頭部に舌先を這わせたり、舌先で乳首を突いたりして、智美の乳房を愛撫した。 
「タ・オ・カ・さん! そろそろアソコも責めて」 
その言葉に智美の水着を膝のあたりまで引き下ろした。 
すると薄目のヘアと熟れた秘部が目に入った。 
続けて夢中になって舌先で割れ目をなぞる田岡。 
「あ、ああ・・・」 
智美のあえぎ声と小刻みに震える身体が、田岡の本能を刺激した。 
「も、もうだめ。田岡さん、ねえ、あたしを好きにして!」 
智美はそう言って水着を完全に脱ぎ捨てた。しかし、直後にハッとした表情を浮かべると、言葉とは裏腹に後ずさりを始め、そのまま背中からプールの中へ飛び込んだ。 
「サトミちゃん!」 
智美は全裸のまま潜水をした。少し経って浮き上がると荒い息をしながら呼吸を整えた。 
田岡に顔を向けると恥ずかしそうな顔をして言った。 
「田岡さん、ごめんなさい! あたし変でした! 水着をこっちに投げて下さい。その気にさせてしまって本当にすいません!」 
「サトミちゃん・・・」 
 
スポーツクラブ近くの居酒屋に二人は移動した。 
智美はこれまでのことを話した。 
さすがに、夢の中の生々しい性描写や同時進行で無意識に自慰行為をしたことまでは話せなかったが。 
「そんなこととは・・・。それにしてもサトミちゃんを狙うなんて誰なんだ。俺が見つけ出して二、三発殴ってやりてぇな。だけど、何の手掛りもないんじゃあ」 
一通りの話を聞いて田岡はこぶしを握り締めた。 
「あたし、もうどうにかなりそうで・・・」 
「俺が何とかする・・・。物事を理屈で考えるのはちょっと苦手だけどな」 
「すいません」 
「いいよ、すいませんだなんて・・・。それにしても加奈子って本当にレズの気があるのかな?」 
田岡は山村加奈子のことも気になるようだった。 
「そうとは言い切れませんけど。でもまんざら冗談とも思えない感じだったんで」 
「ともかく、使い慣れない頭だけど話を整理してみよう」 
「はい」 
「夢の内容については心理学でも興味ないとわからんけどな・・・。二度の性的な夢の後、通販で競泳水着が送られた。そしてもう一つ競泳水着が送られてまた変な夢。それに眠ってる間に無意識に水着を着たのも三回。どう関係があるんだろう? 単なる偶然か?」 
「それなんですけど・・・、夢に関しては別問題だと思います。あたし、心理的影響を受け易いんです」 
それから二人は悪夢に関して話し合った。 
一度目のマスクを付けた男に襲われた夢は、その数日前に見たサスペンスドラマの影響だろうと智美は話した。 
レスビアンの二人組と加奈子に襲われ、その模様を高木がじっと見ていたという夢は、直前の酒席で話題にした人間で印象に残ったというのと、加奈子に言い寄られたことも影響したと分析した。 
プールで口を塞がれてHを強要させられた夢については、水着を送られて動揺したことが影響したと推定した。 
水着好きのストーカーのしわざと思ったので、プールで襲われる夢につながったのだろうと。 
悪夢について話し終わると、智美は少し吹っ切れた表情で言った。 
「今までも、自分で想像したこととか人に言われたことで夢にうなされるのって結構ありますから。そんな性格がいい方向に出たこともあります」 
「ほう、例えば」 
「水泳です。あたし中学、高校と同性のクラスメートからいじめを受けてたんです。理由はいろいろあるようですけど」 
「いじめに?」 
「水泳部に入って水泳に打ち込んでいるといやなことも忘れられたんです。そしてあたしをいじめた人を見返してやるんだって、がんばったんです。絶対にうまくなれるって自己暗示もかけて。そうしたらぐんぐん上達しました」 
「それは立派だね」 
「でも困りました。男子生徒から『水の女王』とか『校内一の水着アイドル』とか呼ばれてちょっと嬉しい感じでしたが、ごくわずかの仲良しを除いて女子生徒から一層反感を買う結果になって」 
「そうか。まあ確かにサトミちゃんはきれいだからね」 
「あたし自分じゃそんなこと・・・。話がそれましたね。とにかく夢の件は置いておきましょう」 
「じゃあ具体的な現象である、送られた水着と水着をいつの間にか着ていた件だけど、最初はたんすに入れていた水着を身に付けていたということだね」 
「はい」 
「犯人はきっとピッキングか何かで家に侵入する技術を持った奴じゃないかな? 最初に侵入した時にたんすを物色して水着を見つけ、サトミちゃんに着せた。まあ水着フェッチな奴なんだろ。それで味を占めた男は、水着のサイズをチェックし、以後好みの競泳水着を買って送り付けた。そして届くのを見届けては侵入して着せた」 
「あたし、誰かが部屋に侵入してるなんて、全然気付きませんでしたけど・・・」 
「きっとクロロホルムみたいな薬物で目覚めないようにしたんだろう」 
「じゃあ、あたしは薬で眠ったままにされて、水着を着せられ・・・、もしかしてレイプまでも・・・」 
田岡は智美の顔をじっと見つめて首を横に振った。 
「そこまで考えるのはよそう。きっと水着姿を見て満足する変態なんだよ。せいぜい写真を撮って愉しむとか・・・」 
「・・・」 
智美はうつむいてしまった。 
「サトミちゃんしっかりするんだ」 
「は、はい・・・」 
「絶対見つけ出してやるから」 
田岡は強く言った。 
 
次のスポーツクラブの休館日、智美が家にいるこの日に犯人が何らかの行動を取るかと思われ、田岡は智美の家の近辺を見回った。しかし何事もなかった。 
田岡は智美に食事でもと誘われたが断って引き揚げた。 
駅近辺の繁華街に差し掛かった際、駅を挟んで反対側に山村加奈子のマンションがあることをふと思い出すと、田岡にある光景が目に入った。 
『あれは・・・』 
目撃したのは、平木隆男と山村加奈子の二人だった。まるで恋人同士のように体を密着させ、酔っている足取りで歩いていた。 
『あいつらデキていたのか・・・!? 加奈子め、どこがレズだ!』 
平木には妻子がいる。つまり加奈子とは不倫関係ということになる。 
田岡は気付かれぬよう二人に接近し、会話に聞き耳を立てた。二人は結構酔っているらしく、周りの人間の動向に無頓着だった。 
「ヒラキー、あたしのことたっぷり抱いてくれて安心したわ」 
「ああ!? どういう意味だ? お前と別れるとでも思ってたのか?」 
「そうよ。それもサトミが原因でさ!」 
「何だと? あのコがどうして?」 
「てっきり、あんたはサトミに気が移っていると思ってた。違う? 端で見てるとあんたとサトミがいい雰囲気に見えた。そして奥さんもあたしも捨ててサトミに乗り換えると」 
「バ、バカ言うな。彼女はあくまで水泳に情熱を持つ同志だよ。そしてかわいい後輩インストラクターだ」 
「あんたの口からそんなきれいごとが出るとは思わなかった! 女好きのヒラキが」 
「おいおい、おれを高木のエロじいさんと一緒にするな」 
「でもさ、あんたのかわいい後輩、辞めるのも時間の問題かもよ」 
「ん? それはどういうことだ?」 
「あのコに嫌がらせしてやったのさ。てっきりあんたがあのコに惚れてると思ったから」 
「何やったんだ?」 
「さあね」 
田岡は駆け寄り、両手で二人の肩をわし掴みにした。驚いて振り返り、酔いが急速に醒めるような顔付きの二人だった。 
「お、お前、何故ここに?」 
うろたえる平木だった。 
「それより、話は聞かせてもらったぜ」 
田岡が言うと加奈子が応えた。 
「わかったわ。路上じゃナンだから、あたしのマンションで話しましょう」 
 
勘違いから智美に嫉妬心を抱いた加奈子が取った行動を、加奈子はあっさり白状した。 
まずスポーツクラブの智美のロッカーからアパートの鍵を持ち出して合鍵を作ったこと。 
レズの気がある素振りをして智美に言い寄って揺さぶりをかけ、その夜の未明に合鍵を使って智美の部屋に侵入したことも。 
その時は、下着の入ったたんすの引き出しを荒らしてストーカーの手口を装う計画だったが、水着を発見したのでそれを着せて驚かす作戦に切り替えたことも告白した。 
智美が目を覚まさぬように少量のクロロホルムを使ったことも付け加えた。 
さらに通販で競泳水着を購入して送りつけたことも認めた。 
それによって智美の水着姿に興奮するストーカーの存在を印象付け、狙われているという意識と襲われるかもしれないという恐怖から、仕事を辞めてアパートを引っ越すことを期待したと言った。 
「お前、そうまでして平木を・・・」 
呆れた表情で田岡が言った。 
「そうよ。いずれ奥さんと別れてあたしと一緒になるって約束してるんだもん。この人はあたしのものよ」 
平木は無言だった。二人に田岡は言った。 
「おい平木、奥さんと子供のことをどう考えるのか、こんな困った加奈子をどうするか、お前が考えることだから何も言わん。加奈子、お前が男だったら殴ってやるところだが、サトミちゃんに対してやったことの責任を自分なりに考えろ」 
 
その数日後、加奈子はスポーツクラブを辞めた。 
智美はストーカーが加奈子の演出だったと田岡から聞いて落ち着きを取り戻した。 
智美も田岡も、送られた二つの競泳水着を智美が眠っている間に身に付けた件についても、加奈子が忍び込んでやったことと思い込んでいた。 
加奈子による競泳水着への着せ替えはあくまで最初の一回だけなのだ。 
 
夜になって異変が起きた。 
智美は眠りに着いていたが、突如ゆっくり上体を起こした。しかし表情、目付きは本来の智美ではなかった。 
ニヤリと薄笑いを浮かべると、身に付けた衣服と下着をさっと脱ぎ捨て全裸になった。 
「サトミ、リサよ。また来てあげたよ」 
そう言って高笑いをした。「リサ」とは子供の頃に近所にいた女の子の名前である。 
智美は子供の時に母親からよく体罰を受けていた。体罰というより今で言う虐待に近い行為だったかもしれない。母親に体罰を加えられる度、裕福で優しい両親に育てられたリサをうらやみ、「リサの家に生まれれば良かった」と切実に思った。 
そして、田岡に打ち明けたように中学、高校でのいじめ。それに暗示に掛かり易い性格によって、人格の乖離(かいり)、つまり多重人格の芽が生まれていたのである。 
高校卒業後は足の故障から水泳をやめ、一人暮らしを始めて体育系女子大に通い、普通のOLと歩んだが、水泳が忘れられず現在に至った。 
これまで別の人格は何かの拍子に短時間出現する程度で軽症だった。ところが加奈子からの嫌がらせに動揺したことで症状が進行してしまったようだ。 
 
智美、いや、リサは送られてきた競泳水着がしまってあるたんすの引き出しを開けると、赤い水着を選んで取り出した。 
「やっぱりあたしには赤が合う」 
そう言いながら水着を身に付けた。 
母親や同級生の女の子と敵対せざるを得なかった智美は、自己嫌悪に陥る一方で誰からも愛される女にあこがれた。リサという人格はいわば八方美人的な人格だった。 
「競泳水着を身に付けると思い出すなあ。サトミがいい順位でゴールした後、体力を使い果たしてぐったりしていると、あたしが代りに皆の声援に笑顔で応えた・・・。そして男子達のアイドルを見るような、それでいてHな視線がたまらない」 
リサはにやにやとしながら、指先で水着の感触を味わい、乳首の先と股間を撫で回した。リサという人格は競泳水着姿で男の視線を浴びるのがとても好きなようだ。 
「ああ、水着の程よいフィット感が、締め付けがたまらないわ・・・。男たちのいやらしい視線を連想してひとりHをせずにはいられない。それもただの競水オナニーじゃ満足できない!」 
そう言ってリサは再び高笑いをした。 
「さて、どんな風にサトミを責めてあげようか? 紐を体や足にギュッと巻き付けて自縛オナニーでもしてあげようかしら・・・? そうだ、父さんが送ってくれた新鮮な野菜を使って責めよう」 
 
リサは冷蔵庫から適当な大きさのきゅうりを一本持ち出して、ていねいに水洗いし、水滴が付いたままのそれを口に含んだ。次に舌先を這わせてきゅうりの感触を確かめた。そして水着の股間にきゅうりの先端を押し当てると、わずかに上下に往復させて刺激した。 
「ああ・・・」 
さらに冷蔵庫から赤く熟したトマトも取り出した。トマトをひとかじりし、そのみずみずしい果汁を水着の上から両乳首に擦り付けた。 
酸味が刺激となって両乳首がピンと突起した。 
再びベッドに寝そべると、さらに乳首のあたりにトマトの果汁を絞っては水着に染み込ませた。 
そして突起した両乳首を指先でつまんで軽くねじりながらつぶやいた。 
「ほんと新鮮で真っ赤なトマト。赤の水着に合うね・・・」 
残ったトマトは口に入れ、乳首への刺激を続けた。 
頭の中では、男達がその光景をじっと見ているようなシーンを想像した。 
想像の中では男達が次々とリサに襲い掛かって来る設定なのだ。 
次にリサは荒っぽく水着の股間をずらして、露出した秘部に先程のきゅうりを挿入した。 
有機栽培のきゅうりは三日月形に曲がり、大きめのイボが点在している。それを刺激にして抜き差しを繰り返すと、愛液がみるみる滲み出た。 
リサは徐々に抜き差しのペースを上げた。体は思わずピクピクと揺り動かし、足先が浮き上がるような感触を覚えた。 
「ああ、たまらない! イッちゃいそう・・・」 
さっき口に入れたトマトのかけらは噛まずにしゃぶっていた。口を半開きで悶えていると、唾液とトマト果汁の混じったものが口から漏れて枕に染み込んだ。 
「ああ・・・」 
きゅうりのイボが膣内粘膜をピクンと刺激する感触を愉しみながら、リサは強く意識した。 
「サトミ、あんたの体を100%奪ってやる。そして、あんたに代わって仕事しながら男達の視線を目一杯浴びて・・・。あんたはずっと黒い夢のような世界の中よ・・・」 
 
(終わり) 
 
【作者より】 
「China Cat」です。(ミュージシャンにも同じ名の人がいるようですが別人です) 
ネタ切れのため、このサイトへの投稿はこれをもって休止いたします。 
小説投稿の場を提供して頂いた「競泳水着が好き!WebMaster」さん、並びに私の作品を読んで頂いた方、この場を借りてお礼を申しあげます。 
とは言っても、またすぐにアイディアがひらめいて次回作を投稿するかもしれませんが、その節はよろしくお願いします。 
 
  
  
(続く)
  
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