「競泳水着夜話・2」 著者: こちら亀有公園の反対側様 投稿日: [2004.07.03]
  
競泳水着夜話・2 
  
<競泳水着夜話>の人物達がそれぞれの愛欲や思惑を胸にする居酒屋での一幕。 
すぐ隣の居酒屋でも、競泳水着フェチを秘めた男二人が酔いながら話を展開していた。 
二十九歳と三十三歳の男二人で、会社の先輩・後輩の間柄だった。 
先輩格の男は富田、後輩の方は寺岡という名前だった。 
 
グラスのビールをグイッと飲み干した富田。 
彼は仕事では後輩への面倒見がいい方だが、酔うと横柄になり、かつ”中年のオヤジ風”に変貌する傾向があった。 
それゆえ社内での評判は微妙だった。 
しかも、横浜生まれだが、親戚の影響なのか、酔うと口調に西日本方面の言い回しが混じる傾向があった。 
 
そんな富田に、寺岡やその同僚達は、”トミタのオッサン”とか、単に”オッサン”と陰で呼んでいた。 
寺岡は富田に誘われ、たまには一対一で飲んでもいいかという気持ちで応じたのだった。 
 
仕事絡みの話から始まり、それも一段落すると、寺岡がホームページを開設したいと思っていることを打ち明けた。 
すると富田は寺岡のホームページ開設について興味を示した。 
 
「お前がホームページを開設? しかも、小説サイトを立ち上げるって?」 
「学生時代に書き留めてあった短編がいくつかあって、ホムペで誰かしら目に止まってもらえればなんて思って」 
「ほう・・・。で、ジャンルは?」 
「エスエ…」 
「何!? エスエムやて!? お前そんな趣味あったんか?」 
「違いますって! SMじゃなくて、エ・ス・エ・フ!」 
「SFか。悪いな。ちょっとした聞き違えじゃな」 
「最後まで聞いて下さいよ」 
「で、どんな内容や?」 
「気の向くまま書いたんで、いろいろですが。ショートショートみたいなのもあります」 
「ほう。”星新一”的やねぇ」 
「学生の頃、多少影響されたんで」 
 
ここまではまだまともな会話だった。 
寺岡が富田のグラスへビールを注ぐとビール瓶が空になり、寺岡は店員に瓶ビールの追加注文をした。 
 
「なあ、エロ系はないのか?」 
富田が思い立ったように口を開いた。 
「は? そういうのはちょっと・・・。表現方法がわからないし」 
やや戸惑う寺岡。 
「いやなぁ、ネットで小説というとそういう方がウケいいしな」 
「そうッスね。でもそんな注目されたいとも思わないし」 
「そうか。俺的にはエロ系路線もほしいところだな」 
「はあ・・・、それなら例えば?」 
「俺ははっきり言って水着フェチなんや。ビキニもいいが、この所は競泳型もいいな、なんてな。それもバリバリの水泳選手みたいなのが着るより、普通の女のコがそれ着てる姿がセクシーでたまらんわ」 
「富田さんも競泳水着フェチ?」 
「ん? ”も”ということは、お前もそうか?」 
「あ? まあ、多少ですが・・・」 
「じゃあ話は早い。競泳水着の女が登場させる現代エロ小説を創らへんか?」 
「はあ・・・。富田さんならどんなストーリーを考えます?」 
「そうやな・・・」 
 
富田は少しの間、頭の中で何かを考える様子だった。 
寺岡はその様子を見て思った。 
(オッサン、変な欲望でも抱いているんだろうか・・・。それにしても、競泳水着フェチで共通してたとは意外というか、ちょっと心外というか・・・) 
すると、富田は思い浮かんだストーリーのあらすじを口にした。 
 
「飛び込み台も備えた立派なプールがある高校の水泳部を舞台にしてな。デキの悪い女子新入部員と危ないコーチの話や。いくら練習させてもだめな女子部員を一対一で居残り練習させる。ところがコーチは次第にムラムラして、セクハラのオンパレード。しまいにはデキが悪いのに腹立てたのとエロ趣味が高じて、女子部員を縛り上げ、飛び込み台使って逆さ吊りの刑。水責めを楽しむってのはどうや?」 
「はあ・・・。しかしそれってSMっぽいッスね」 
「それ位の方がウケるんだって」 
「俺、そういう路線はちょっと・・・」 
寺岡はそう言いながら、内心はこんなことを思った。 
(この人、あまりエロ話しない人かと思ってたから・・・。もっと飲ませると本性出して面白いかも・・・) 
 
そこで、寺岡は積極的にビールを富田に勧めた。 
すると、いい気分で酔い心地の富田の笑顔があった。 
「おお、ありがと! ビールはこれ位にして焼酎にでもするか」 
それも上機嫌に勢いよく口にする富田。 
寺岡は富田の変貌を期待した。 
(オッサン、もっと飲んで楽しませてよ・・・) 
  
富田は気分よく、酎ハイのレモンサワーを口にした。 
次第に横柄な仕草を始める富田。 
「こう見えてもなぁ、わし、酒はそれ程強くないんよ」 
「はあ。でも結構飲んでますが・・・」 
「ほんまか? 寺岡、お前が飲んでおらんのやろ。もっと飲めや」 
「は、はい」 
そこで寺岡は梅酒サワーを注文した。 
「だいたいなぁ、うちには和歌山に福岡、長崎と親戚が散らばっておってな。おっちゃんもおばちゃんも、よう飲むんよ」 
寺岡は思った。 
(やはり、関西や九州に親戚がいるのか? あんたも立派な”おっちゃん”だよ) 
 
それから再び、競泳水着の女をテーマにした小説の話題に戻った。 
富田が何か思い付いたように口を開いた。 
「ストーリーがまた浮かんだで。やっぱさぁ、いじめてやりたくなるようなキャラの女を登場させて、読者の共感を得る展開がウケに結び付くやろ」 
「はあ・・・」(今度は何だ?) 
「まあこんな展開や」 
  
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毎年、夏になると、森林に囲まれたプール付きの別荘へ訪れる裕福な一家がいた。 
両親と子供が三人という家族構成で、使用人として若いメイドも雇っている。 
一家には水泳好きの女子高生がいて、さっそくプールで泳ぎたくなって仕方なくなる。 
女子高生の名前は、”ミユキ”としようか。 
  
「一日目ぐらいはのんびり過ごし、泳ぐのは明日にすれば」と言う家族の言葉を聞き入れず、ミユキはどうしても泳ぐと言って聞かない。 
呆れた家族はミユキを残して、市街地の娯楽施設へ出掛けてしまう。 
  
ミユキは家族を見送ると、メイドにプールの掃除を命じる。 
はっきり言って、傲慢で嫌な奴。 
メイドに、さっさとプールが掃除を終えて水を張らないと、クビになるように仕向けると脅す。 
その間にミユキは大好きな水着に着替える。もちろん競泳型で、色は金持ちのお嬢さんらしく赤を基調とした派手な柄。 
その上に真っ白いTシャツを着ると、メイドのプール掃除を見届ける。 
白いTシャツから透けて見える赤い競泳水着が、かわいらしさとセクシーさをかもし出し、水着がヒップに食い込む様が超エッチ。 
  
だがミユキは外見と違って、コケの付着した箇所を細かくチェックしては、ネチネチとメイドを叱りつけ、メイドも内心ムカッとする。 
一方で、その模様をじっと遠くからながめる四人の若い男達がいた。 
毎年、ミユキがプールで泳ぐ様子を見ていて、この年はある計画を持っていた。 
  
やがてプールの掃除と注水が終わると、メイドに一言の礼もなく、平然とした表情でミユキは白のTシャツをパッと脱ぎ捨て、プールに飛び込んだ。 
それは男達の計画のスタートサインだった。 
  
男一人が訪問販売員を装って別荘の玄関を訪れ、メイドの注意を引く。 
彼の言葉の巧みさにメイドはついつい話に聞き入ってしまう。 
その間に残りの男達は裏門を乗り越えて敷地内に侵入。 
手際よくプールサイドに行って、泳ぎに熱中するミユキを捕らえようとする。 
その手口はこうだ。 
  
見知らぬ男達がプールサイドにいることなど気付かずに泳ぐミユキに、彼らは捕獲網を放ち、見事にミユキを捕獲する。 
ミユキは何が起きたのかと混乱してもがくと、どんどん網が体に絡み付く。 
そこで男達は一気に網を引き、プールサイドに引っ張り上げると、騒がれないようミユキにクロロフォルムのような薬物を嗅がせる。 
  
メイドの相手をしていた男が引き上げる頃には、ミユキは裏門から連れ出され、ワンボックスカーの荷室に運び込まれる。 
その後は、彼らのガレージで次々と輪姦されまくる。 
  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
富田は酔いの回った顔で得意げな表情して見せた。 
「こんな展開に細かい描写を加え、嫌な女が男達に犯されてざまあみろと思わせる雰囲気を出すことやな」 
「はあ・・・、でも俺、やっぱこういうのは・・・」(あんたが書けよ) 
「じゃあ、俺がまとめたるから、ホムペに載せたれや」 
「はい。お願いします」(始めからそう言えよ) 
「まあ、気が向いた時に書いてみるか・・・。タイトルは何がいいかな?」 
「”捕獲された競泳水着の女”なんてどうです」(どうせ文句言うだろうけど) 
「それもいいがな・・・。”競泳水着の女”を略して、”競水女、捕獲作戦”なんてどうやろ?」 
「おお、いいッスね」(何が”作戦”だよ。くだらねぇ・・・) 
  
寺岡は、富田のエロ話をする様子を面白く捉えていたが、次第に疑惑が芽生えてきた。 
(オッサン、もしかして何か女に恨みでもあんのかな? 美人の水泳選手に惨めにふられたとか? もしかして、”ミユキ”っていう名前だったりして) 
  
実は寺岡には、”ミユキ”という名前のクラスメートが高校時代に存在していた。 
彼女は水泳部で、校内でアイドル的存在だった。 
だから富田のストーリー中に、”ミユキ”の名前が出た時はちょっと不快だった。 
富田にも”ミユキ”という女の存在があったとしたら、それはどんな女だろうか。 
富田とは年代も出身も違うから、寺岡にとっての”ミユキ”と全く別人だろう。 
そんな興味を抱きつつ、寺岡はトイレに立った。 
  
寺岡がトイレから戻ると、彼は思わずため息をついた。 
飲み過ぎたのか、富田はテーブルに両手を着き、そこに顔を伏せて寝込んでいた。 
「やれやれ、世話の焼けるオッサンだ。少ししたら起して帰るか・・・」 
すると、予期せぬことが寺岡に起きた。 
  
「もしかして、テラちゃん?」 
「え?」 
背後から声を掛けられ、振り返った寺岡。 
「ミユキ?」 
「そうよ。久しぶりね」 
  
声を掛けてきたのは、まさに高校時代の同級生のミユキだった。 
名前は漢字で美雪と書き、寺岡にとって恋愛感情を持った女だった。 
当時美雪には先輩と付き合っているという情報もあり、告白するまでは至らなかった。 
美雪の表情をよく見ると、競泳水着のアイドルの印象が甦る。 
  
(まさか、ここでミユキと再開するなんて・・・。こうなるとオッサンに誘われてこの店にいたことを感謝したくなるぜ) 
そんな寺岡に、ミユキは明るくかわいい表情で言った。 
「十一年振りだよね。さっきからテラちゃんじゃないか、いや人違いかもって、気になってたのよ」 
「じゃあ、あっちの方のテーブルにいたんだ?」 
「うん。仕事関係の人達と会食しててね、そろそろ帰ろうかってなって、それでテラちゃんかどうか確かめに来たの」 
  
寺岡は美雪を隣の席に座らせると、ドリンクや料理をオーダーした。 
美雪は寝込んだ姿の富田を気遣って言った。 
「そちらのお連れさん、大丈夫なの?」 
寺岡は笑みを浮かべて答えた。 
「ぜんぜん大丈夫。ちょっと眠くなっただけだからさ」 
  
その後二人は、寝込んでしまった富田を尻目に、互いの近況を話題にしゃべり始めた。 
それによると美雪は、大学卒業後、平凡にOLをしていたが、数年前に大人向け女性ファッション雑誌のモデルとしてスカウトされ、現在に至っているとのこと。 
寺岡は大人になった美雪を改めて見ると、セクシーさに磨きがかかっていることに興奮を覚えた。 
(モデルやっているんだから、今のこのコの競泳水着姿、即ボッキものだろう・・・) 
寺岡はそんなイメージを抱きつつ、美雪との会話に熱中した。 
そうなると、つい声を大にしたり、高らかに笑ったりするものだ。 
しかし、その声に反応して、富田が目を覚ましそうになった。 
  
「ミ、ミユキ・・・」 
かすかな寝言のような富田のささやき。 
思わず美雪は富田の方を見た。 
相変わらず顔を伏せたままなので、目を覚ましたわけでもなさそうだ。 
寺岡は小さな声で美雪に言った。 
「気にしないで。どうもこのオッサンにも、ミユキという知り合いがいるらしいんだ。どうせ君とは別人だろう」 
「へー」 
それでも不思議そうに富田を見る美雪。 
  
寺岡は思った。 
(おいおい、こんな変態のオッサンなんて気にするなよ) 
だが美雪からは思わず一言が飛び出した。 
「あたしにはさ、兄が一人いるんだけど。その友達とか先輩で、こんな風に飲み過ぎてその場で寝込んじゃう人、何人かいたんだよね」 
「え・・・」 
「そのうちの一人がさ、タチの悪い人で、寝込む前にエッチな話を連発するのよ。昔、うちに遊びに来て、兄の部屋で飲んだ時なんか、あたしにセクハラしてきたのよ」 
「困った奴だね」(まさかそれって・・・、いや、似たようなのって結構いるだろう) 
「”ミユキちゃ〜ん、水泳してるんやてな〜。水着姿、見せてくれへん〜?”なんて関西系の言葉でしつこく迫ってくるわ、体を触るわで」 
「それでどうしたの?」(なんか、富田のオッサンに似てる・・・) 
「さすがにあたしもブチ切れて、急所をけり上げて追い出したわ。あたし、空手も少し習ってたし」 
「空手ね・・・」(知らなかった。ミユキって、結構強かったりして) 
「その人、その後も懲りずに何度も似たようなことを・・・。そのたびにあたしも撃退してやったけどね。でも、しつこくて参ったわ」 
「やな奴だね」(なんだか、若い頃のオッサンのしわざって気がしてきた・・・) 
  
美雪は富田を観察しながら言った。 
「そこの人、似てるんだよね。もう何年も会ってないから、何となくだけど」 
寺岡はあきれた。 
(美雪にセクハラした男って、富田のオッサンだとしたら・・・? 世間は狭いというか、事実は小説より奇なりというか。そんなことよりも早くこの場を・・・。やっぱ、美雪は帰らせた方がいいか? でないとややっこしい事になるよな) 
  
すると富田がまた寝言をささやき始めた。 
「ミユキ・・・、キョウスイ・・・キセテ・・・、オカシテ・・・」 
寺岡は苦笑するしかなかった。 
(”キョウスイ”って、”競泳水着”の略か? 美雪にそれを着せて犯したいって? このヤロー、こんな妄想ばかり抱いてるのか) 
  
次の瞬間。 
起こるべくして事態は起きた。 
何と美雪が、それまでの態度を一変させ暴力的になった。 
さっと手を伸ばすと、富田の髪をわしづかみにして顔を無理やり上げさせた。 
「やっぱり!」 
目を覚ました富田はハッとした。 
「ミユキちゃん! どうしてここに!?」 
「寺岡くんの知り合いでね、とんだ偶然だったね。それより、相変わらずのエロオヤジしてるじゃん! あたしを犯す夢でも見てた!? 昔みたいにこの場でぶっ飛ばしてやろうか!?」 
美雪はそう言うと、富田の頬を平手で軽く叩いた。 
富田は美雪を恐れているようで、気弱な少年のような口調で言った。 
「違います・・・。僕はですね・・・、あなたの競水姿にあこがれて」 
「だから!?」 
「”ミユキさん、競水、着させて。競水を貸して”。そう言ってたんですよぉ〜」 
「苦しい言い訳。じゃあ、あんた、今度は女性水着の着用趣味に走ったわけ?」 
「ま、まあ、そういうことです」 
「つまんないこと言うと、また金ケリ喰らわせるよ!」 
「い、いえ。あれは男にとって非常に辛いッス」 
  
その後、美雪は富田から現金を強引に出させ、飲食代全額に充てさせた。 
もはや富田には、得意気になって危ない小説ネタを披露した面影はなかった。 
寺岡にとっては何とも言い難い一夜だった。 
ともかく、これを機に寺岡と美雪の付き合いがスタートした。 
  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
数日後、寺岡と美雪は初エッチの時をホテルで迎えた。 
美雪は、競泳水着フェチの彼のために、ピチピチの競泳水着を身に着けてくれた。 
寺岡はベッドに仰向けの状態で美雪に視線を送ると、それに応えるように、わざとヒップに水着を食い込ませたり、胸の部分を自ら触って乳首を突起させたりした。 
(たまらない・・・。やっぱ美雪はいい女だ・・・) 
  
そんな寺岡の様子に、美雪は悪女っぽく笑い、こう言った。 
「あらあら、股間の主がピンピンしちゃって・・・、本当にエッチなんだから・・・。そろそろお仕置きしてあげようか?」 
寺岡は苦笑いを浮かべ、こう思った。 
(しかしなぁ・・・。俺、こんなことになるなんて、夢にも思わなかった。富田のオッサンのせいで、美雪、男いじめが趣味になるとはな・・・。オッサン、なんだかんだ言ってマゾなんだろ)  
  
寺岡は今、ベッドの四隅の脚に両手・両足を縄で縛り付けられていた。 
美雪は寺岡の顔を見下ろして言った。 
「まずは、水着が食い込んだお尻で顔の上に座ってあげようね。窒息しないよう気を付けなよ」 
「え・・・?」 
とはいえ、まんざらでもない寺岡だった。 
  
  
(競泳水着夜話2・終わり。パート3はなしです) 
  
  
 
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