「銀英伝〜メアリーの戦い(後編)〜」 著者: はむねも様 投稿日: [2021.08.22]
1
 
メアリー・スーが帝国領に潜入して二ヶ月後。任務を終え、帝国と連合の中継点であるセザーン自治領を経由で自由惑星連合は首都星ハイネケンへと帰還すると、彼女はただちに統合作戦本部長ドーソン・ロックウェルのオフィスに出頭した。 
 
「敵地での隠密任務ご苦労。では早速報告を聞こうかな、メアリー・スー特務少尉」 
「はっ」 
 
* 
 
メアリーの報告を受けて、すぐに参謀本部臨時会議が招集された。 
「今回、集まってもらったのはほかでもない。しかるべき筋から、近々、吾が連合に対して帝国軍が大攻勢をかける兆しありとの情報を得た。これについての対応を討議するためである」 
ロックウェル大将の発言に、会議室に集まった諸将はどよめき立った。 
ロックウェルの部下が概要を告げる。 
「情報によれば、予想される艦隊規模は約3万隻。アイザーロン回廊を抜け、連合領に侵攻してくるものと思われます」 
「三万隻だと?!」 
「先のアルスター会戦の一・五倍の数ではないか!」 
 
「これは連合のセザーン駐留武官からもたらされた分析結果とも合致するもので、情報には信憑性があります。なお、侵攻予想時期は約一月後であると思われます」 
一同はさらに衝撃を受け、口々に懸念を露わにした。 
「一月だと。早すぎる!」 
「こちらはまだ傷ついた艦隊の再編成すら整っていないのに…。一月後の会戦など到底不可能だ」 
ロックウェルは、諸将を挟んで、向かい側の席にいるリオネール・スー中将を一瞥し言い放った。 
「吾々は帝国を迎え撃つべく、現存する艦隊を集結。新たに『第十三艦隊』として再編成する。ついては、その艦隊司令官にはリオネール・スー中将を当てることを提案したい」 
 それに対し、後方支援担当の次席参謀キャナルゼが諌言する。 
「ですが本部長閣下、スー参謀長は後方戦略指導の要ではありませんか。最前線の艦隊指揮に充てるなどというのはいかがなものかと」 
「たとえ参謀本部が無事でも、この連合首都星が占領されればすべてが終わりなのだ。現在考えうるあらゆる手段を行使せねばならない状況を考慮したまえ!」 
そのほかに反対する者は誰もなく、結局はロックウェルのこの案が承認された。 
 
皆が退室した後、スーとキャナルゼが残っていた。 
「閣下、今回の人事配置はどう考えてもおかしい。小官には、なにか本部長の邪な思惑のようなものを感じるのですが」 
スーは腕を組み、じっと目を閉じて聞いていたが、 
「だが、たとえそうだとしても、誰かが艦隊を立て直さねばならないのだ」 
 
* 
 
一方、そんなこととはつゆ知らず、メアリーは今日もプールでトレーニングに励んでいた。 
いつものようにルシアンが顔を出すが、どこかよそよそしい。 
 
「どうしたんだいメアリー。合宿から帰ってきてから随分とつれないじゃないか」 
「ううん、そんなことないわよ」 
精一杯、明るく振る舞ったが、 
 
…ゴメンね、ルシアン。私、汚れちゃった…。 
 
 
練習を終え施設を出ると、複数の軍服の男らに呼び止められる。 
「メアリー・スー少尉、ですね。ロックウェル本部長がお呼びです」 
 
突然オフィスに呼び出された彼女にロックウェルは告げた。 
「スー少尉。貴官には、吾が連合の軍事機密を帝国に漏洩した嫌疑がかけられている。重大な国家反逆罪だ」 
「そんな、何かの間違いです。証拠はあるのですか!」 
彼は見下しながら不敵な笑みを浮かべ、メアリーは自分が嵌められたことを悟った。 
「この悪魔! あなたのような卑劣な人間には、きっと法の裁きが下るわ!!」 
「連れてゆけ!」 
彼の部下らによってメアリーは連行されて行った。 
「あの女の処置は?」 
「特別拷問室 トルクのところへ放り込んでおけ。二度と正気で出てこれないようにな」 
 
…これで目障りな親子共々始末できるというわけだ。 
 
2
 
「特別拷問室」、それは、自由惑星連合の法律上、公式には存在しないことになっている機関であり、その実態は、帝国軍の捕虜およびスパイ容疑の兵士一般市民に対する非合法な拷問を専門としていた。 
また、この事実について知る者は連合政府の中でもごく一部しかおらず、「拷問を受けた者は精神病院送りになる」と密かに囁かれていた。 
 
「まぁ小さな女の子なんで珍しい!」 
暗い牢屋の鉄扉が開かれ、白衣姿の数人の黒い人影が逆光で照らし出される。話かけているのは真ん中の巨漢の人物のようだ。 
「私がたくさん可愛がってあげるわ!」 
彼の部下たちによって別室へと連れ出されるが、憔悴したメアリーに抵抗する気力は残されていなかった。 
 
なぜか彼女はいつも着ているのと同じ競泳水着に着替えさせられると、部屋の中央にある寝台に寝かされ、革ベルトで人形に手足を拘束された。 
部屋は薄暗く、旧式のベッドには塗料の剥離したサビや血糊などがこびり付き不潔であった。 
 
「はじめまして、ミス・メアリー。私は特別拷問官のジョック・トルクよ、よろしくね。 
普段はむさ苦しいオヤジばかりでうんざりしていたの。でも、上の方がアナタを好きにしていいっておっしゃるので、今日から私の大事な玩具よ♥」 
 
メアリーは彼の異形な様相に恐れおののいた。そのトルクと名乗る人物は、まるで巨大なダルマの様な体格で、分厚い脂肪が首まで垂れ下がっている上にドギツイ化粧が塗りたくられ、その太ましい腕にはおびただしい量の入れ墨が入れられていたのだ。 
 
トルクは彼女の傍らに来ると、やおら屹立した性器を見せつけた。だが、それはサイボーグ化された器官になっており、卑猥な音とともに回転し蠢いていた。 
 
「驚いた? 私の躰はね、拷問専用に改造されているの。これで、あなたの一番好きな格好のまま犯して  ア ゲ ル  !」 
メアリーは恐怖のあまり声を失い涙を溜めた。 
 
特別拷問官は、連合首都星から遠く離れた辺境惑星出身者で構成されていた。かれらは、連合には表向きいないはずの奴隷賤民(アウトサイダー)であったのだ。 
 
トルクはメアリーの顔面に覆いかぶさると、彼女の鼻先にそのグロテスクなイチモツを突きつけた。 
「可愛いお口。私のマラで溺れなさい!」 
そういうと、鼻をつまんで彼女の口に無理矢理ねじ込んだ。 
強制的に喉奥まで突っ込まれ、抉るように上下に抽送される。そのたびに苦しそうに歪んだ表情で、涎を垂らして嗚咽する。手足を動かそうとするが、ガッチリと固定された拘束具が動きを制止する。 
 
すでに調教で仕込まれた彼女は、自分の意志とは無関係に、口だけで何度も感じてしまう。トルクの腰の動きが次第に激しくなる。獰猛な獣のような呻き声とともに腰を痙攣し、穢れた牡汁を彼女の喉に吐精した。 
 
「お願い、もう許して…」 
生臭い臭気とネバネバと喉にこびり付く不快感とで、窒息しそうになりえずき咽び泣くメアリーに、追い打ちをかけるごとく無慈悲な沙汰が下る。 
「あら、まだ始めたばかりじゃない。これからもっともっと楽しみましょう?」 
今度は、台の上に四つん這いに固定されると、後ろから凌辱される。 
水着がピンと張ったお尻を撫でられると、水着を貫通して一気に奥まで突き刺され悲鳴を上げる。 
「あなた水泳が得意な軍人さんだったんですってね」 
その言葉に反応してメアリーはぐっと顔を背けた。だが、トルクは容赦なく、 
「その立派なプライドも尊厳も、私が  全  部  壊 し て あ げ る !」 
耳元で囁きながら歪んだ笑みを浮かべ、目を爛々とした狂気に光らせると、彼の卑猥な局部がメアリーの秘部の急所すべてを隈なく刺激する。 
「いや、やだ! もう、止めてっ。お願い、止めて!」 
悶絶するメアリーを見て愉悦に浸るトルク。 
「あら、ゴメンなさい。お口が寂しかったわね。ほら、あんたたち!」 
トルクの命令で、彼の部下の勃起した肉棒が彼女の口を塞ぐ。前後から串刺しにされ、哀れにも上も下も犯され嗚咽するメアリー。だが、下男共に嬲られ責め立てられるうちに、メアリーの様子が変わっていく。 
「あん、…いぃ。…(もっと)」  
「正直に言いなさい。ちゃんと言えたらご褒美あげるから」 
その言葉で、一線弛み、淫語を放ち絶叫する。 
 
「あら、素直になってきたじゃない。そろそろ薬が効いてきた頃合いかしら? ほら自分がして欲しいこと、お願いしてみなさい」 
 
次第に彼女の目がとろんとして、全身が上気してゆくと、自分から懇願する。理性を失い、ろれつの回らない口で淫語を叫び懇願する姿は、もはや淫猥な雌奴隷だ。 
 
「ワタシの体液にはね、『ザイヲキシン麻薬』が混ざっているの。だから、どんなに抵抗しても  無  駄  な  の」 
トルクの醜く律動する陰茎へと繋がった、太ももに張り出た電動シリンダーが絞られ、中に溜まった薬液が送り込まれていく。 
グローブのような拳で彼女の腰を掴むと、卑猥な音を音を立てながら乱暴に玩具のように弄ぶ。何度も激しく打ち付け抉られ、尻や陰部は哀れにも赤く腫れ上がっている。 
「すごいわ、ナカまで締まって、ワタシのこと握り締めてくる! すごく い い わ。ワタシもうダメ! イ ク わ よ!」 
絶頂に達したトルクは低い声で呻きながら震え彼女の中で散種すると、べっとりとした生臭い白濁液がドクドクと外にまで溢れ出て彼女の水着を穢し、メアリーは焦点の合わない虚ろな目で無残に横たわっている。 
 
3
 
さらにこうした拷問は一日何時間にも及び、それがくる日も続いた。 
 
しかし、そんなある夜のことーー 
 
独房では正体のなくなったメアリーが、壁にもたれ掛かりぐったりとしていた。 
そのとき突然爆発音が響き、建物の一部が崩れた。 
「侵入者だ!」 
警報が鳴り、探照灯が照射される。 
集団で廊下を駆ける音が聞こえたかと思うと、分厚い鉄の扉が蹴破られ、完全武装の白い装甲兵団が突入してきた。 
彼女に向けてライトが照射されるが、今度のは救いの光であるらしかった。 
 
「メアリー! メアリー!」 
兵士の内の一人が駆け寄り呼びかけられた後、トラックだかに乗せられ運ばれたようだが、よく覚えていない。 
 
* 
 
朝、目覚めると真っ白なベッドの上にいた。腕には点滴のチューブや心電図らしきケーブルが繋がれている。 
そして、その傍らで突っ伏して眠っているのはルシアンだ。一晩中泣いていたのだろうか、目元が赤く腫れていた。 
窓越しに光が優しく差し込まれる。 
「メアリー、起きたのかい…。よかった、生きていてくれて…」 
覚醒に気づいたルシアンは、彼女の手を取ると頬に寄せて強く握りしめた。 
 
「ルシアン、あなたが、助けてくれたの? …ありがとう、ルシアン」 
そう云うと、メアリーは彼の頭を優しく撫でた。 
投薬処置により麻薬は体から抜けていた。 
 
「王子様のキスでお目覚めかな?」 
そう言いながら、体格のがっしりとした戦闘服姿の紳士が部屋に入ってくる。 
「あなたは?」 
「こちらはワルツァー・フォン・シェレンコフ大佐。『薔薇の男爵(ローゼンバローネ)』の連隊長さ」 
 
数日前、ルシアンからメアリーの失踪の報を聞いたキャナルゼはすぐにロックウェルの策謀に気づき、ウェン艦隊時代の同僚であり、連合軍きっての実力派陸戦部隊で知られるローゼンバローネのシェレンコフに救出を依頼したのである。 
 
「ここは吾がローゼンバローネが兵舎。あなたの身の安全は、吾々が責任をもって保障いたしますゆえ、どうかご安心召され」 
屈強にして精悍な顔立ちのシェレンコフは、大仰な身振りを返すと慇懃に挨拶した。 
 
「お父様は、リオネール・スー中将は無事なの?!」 
一同はうつむいたまま黙っていた。 
「スー閣下は…、戦死された」 
ルシアンの一言に、メアリーは言葉を失った。 
 
単縦陣を予想し、鶴翼の陣型で待ち構えていた第十三艦隊は裏をかかれ、帝国軍に逆包囲されてしまう。リオネール・スーが搭乗する旗艦ティレシアスは、潰走する味方を援護するため最後まで前線に踏みとどまり奮戦するも、帝国軍の猛攻は凄まじく、戦闘開始から六時間後、撃沈が確認された。 
メアリーがその躰でシミュレートされたことが、今度は実戦で実行されたのだ。 
 
「お父さんから君に…」 
そう言うと彼は一通の手紙を渡した。 
そこには娘に宛てた父の最後の言葉が記されていた。 
 
「お父様…」 
 
このとき、はじめてメアリーは、自分がジークハルトから偽の情報を掴まされていたことを知った。 
 
「私のせいで、父は…」 
 
「メアリーのせいじゃないよ。悪いのは卑劣な罠を仕組んだロックウェルの野郎さ! このことを政府に告発しよう!」 
「いや、そいつは上手かないぞ坊や」 
シェレンコフが割って入る。 
「奴さんの背後で糸を引いているのは、おそらくあのトリューガーだ。下手に動くと痛い目を見るのはこちらの方だろうさ」 
「じゃあどうすればいいですか! ここは『自由惑星連合』でしょう? これでも自由で民主的な体制だと言えるんですか!」 
激昂するルシアン、しかし、メアリーは別の方を向いていた。 
 
「私、もう一度帝国に行くわ!」 
 
一同は驚いたが、彼女の決意は固かった。 
「そして、私は、かならず 父の無念を晴らします」 
 
メアリーは治療による体力の回復を待って、ふたたび帝国本星へ向けて出発した。 
 
 
メアリーの戦い(後編) 
Ende 
 
 
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